真っ白

今日の仕事は客先の浴槽内の塗装の立会いだ。

今は小休憩に入っている。

業者が汚れた浴槽内を白く塗り替えていくのを、僕はただ見るだけの仕事なのだが、

ふと10代の頃のことを思い出した。


10代の僕は学校にも行かず、家にいつもいた。

かといってゲームが好きではない僕は、何もやることがなかった。

そんなある日、部屋に寝転がって天井を見上げると、壁が薄汚れていた。

どうでもいいことだったが、ふと、部屋を白く塗り替えたいという気持ちになった。

その時から1週間かけて、僕はペンキで部屋を白くした。

それが無性に楽しかった、

楽しかったというよりスッキリしたという気持ちの方が強かった。

自分に信じられるものは何かと問われれば、

僕は今でも、白いペンキを塗る事と答える様な気もする。


だが今は、人が塗っている壁を眺めるだけの男になった。

それは過去の自分が選択してきたものの

先にあった未来なんだと思う。


さて戻るか…