春らしい暖かい心地に包まれて、
ベランダで洗濯物を干していた。
その穏やかな景色に黒雲が垂れこめてきたのは、
僕の心の中からだった。
ふと、今週取り付ける工事予定の
非常灯用バッテリーのことを思い出した。
最近は直営の工事の受注が続いていて、
バッテリーを17個納品した。
現地で不良のものの型番を控えて、
発注したのだから間違えるはずもない。
…のだが納品されたものと、
不良の物の形状が明らかに異なる…
そんな気がして不安で仕方なくなった。
不安は現実のものとなった。
自分の気持ちに急かされるように、
事務所へ向かい確認すると、明らかに形が違う!
1個、1万近く、合計17万の発注ミスをしてしまった。
とりあえずどうしようか。
17個のバッテリーを抱え、遠く離れた現場まで、
なぜか運ぶことにした。
運ぶというよりそれは隠すというもので、
どうごまかすか、あるいは自腹を切るか、
電車の中で気持ちはグルグルまわり始めていた。
現地に着いたのは4時頃だったか。
とりあえずもう一度形状を確認しようと、
不良のバッテリーを取り外してみたが、やはり違う。
どこかの公園のフリーマーケットでバッテリーを売りつつ、
消えてしまおうかと思ったその時だ、
不良の物が二つに取り外しできることに気づく。
そっと外してみると…新しい物と合うではないか、合うではないか!
合ったんです!
全身から流れていた冷たい汗は疲れへと変わり、
ホッとしつつも、自分の無知にやるせなく、
ただやるせない1日となった。