仲のいい友人が塾の講師を辞めて、
浅草へ芸人修行へ行ってしまった。
この数カ月、割と多く会っていたその友人は
数年前、お笑い芸人として頭角を現していたのだが
その矢先に突然、コンビ解散してしまった経歴を持っている。
あれは秋の始まりの一日、その友人と浅草をブラブラしていた。
今もなお伝統芸能が息づくこの街で、もう一度やり直したいと、
言ったその言葉が、今も頭に過っている。
塾の講師としてそれなりに評価されているにもかかわらず、
辞めてしまうのは、彼が「そこ」の人間でいたくないからだろう。
彼が成功するかは僕には分からないけど、お笑い芸人にはなれるだろう。
それは、行きたい場所へ自らの意思で進んだのだから。
簡単なように思えて、それが難しい。
行きたい場所もわからず、自らの意思も持てず、
生き続けている僕にとって…