始まりの前に

今日一日は天気も悪いし、家でじっと明日を待とうと思っていた。

だが昼過ぎに友人からの誘いがくる。

今日はしおらしく一日を過ごすつもりだったので、断るつもりだったのだが、

「大事な話がある」と言われれば、無下に断るわけにもいかない。


その友人は、大学時代にバイトで知り合った今年30になる人である。

司法浪人をしているようだったが、

現在はバイトの身で、あまりうまくいっていないようだった。


「大事な話」とはなんだろう?僕はよからぬ事を想像していた。

会って、切り出された話、それは彼自身の就職が決まったという事だった。

就職先は大手通信会社だ。


僕は彼のことを友人として見ていたが、同時に彼の今後について悲観的に感じていた。

30過ぎでこの先、仕事に就けるのだろうか、と思っていた。


就職が決まったと聞いて、僕は嬉しかった。

どんな状況になっても、どうにかなるのだということを思った。

と同時に、傷を舐めあうような今までの関係は終るということも感じた。

そして少しだけ羨ましいとさえ思った…それは陽の当たる場所にいける嫉妬かもしれない。


僕にとって仕事が始まる前の最後の日。

雨に打たれ桜の花は散るだろうけど、

僕は僕の事を頑張っていくしかない。