今日も淡々と一日は終った。
今日行った物件は面積は狭いが高さが9階もある細長いビルだった。
インターホンで点検できた挨拶をすると、B1Fに招かれた。
すると、なんだかへんな人が出てきた。
例えて言うなら、志村けんがコントで演じるような頭の弱そうな中年の人であった。
戸惑いつつも、部屋奥へ進むと、その中年の母親であろう老婆がいた。
「点検に伺いました」、そう言うといきなり布団をたたみ出した。
布団の下には小さなマンホールがあって、更にその下に点検口があった。
「早く横になりたいからさっさと終らして」、老婆はそう言った。
部屋内は荒廃していて、季節がらまだ早いコタツではおじいさんが寝ていた。
重い雰囲気の中、点検を終え、その場を立ち去ったのだが、
この家族はビルの所有者であって生活は保障されているけど、
社会からは孤立しているんだなと思った。
何だか、時間が止まっている空間に入り込んでしまった気がして、
何とも言えない気がした。