食べ過ぎポテト

大概、ビルを所有するような人は、金持ちが多く、

たまたまもしれないが、僕のお客さんは老人が多い。

今日もオーナーにあいさつがてら、訪問する事となった。

そのビルは某ロッテリアに一棟貸ししている物件で、

郊外の中都市にある。

オーナーは70歳を超えてきたあたりで、

最近は痴呆の癖が出てきたようだ。


今日の仕事は、オーナー宅、部屋中のスイッチすべてに、

テプラで作ったシールを張って、何のためのものか判別できるよう

依頼を受けた。

たとえばコンセントには『コンセント』と貼って、

わかるようにしたけど、

あまりに数が多く、途中で何の仕事何だかわからなくなった。


終日の作業を終え、帰ろうとしたところ、

オーナーが、お礼にロッテリアのポテトを一緒に食べよう、と言ってきた。

一階のロッテリアへ向かうと、カウンターは大変混み合っている。

しかし、オーナーはビルの所有者という特権で、かまわず列に割り込み、

ポテト3つください、と言っていた。

戸惑いながらも対応してくれている店員に悪いなと思いつつも、

揚げたてのポテトを用意してくれた。

だが、オーナーは納得しない。

「3つではなくて、一人3つ用意してほしい」

僕も店員「?」が頭に浮かんだが、

つまりオーナーと僕、そして奥さん、3つずつ用意してほしいということだった。

困惑している店員をよそに、作業員を待たしているから早くしてほしい、と急かし、

まわりの客もざわついている。

僕はとても恥ずかしく床一点に視線を落とすことしかできなかった。

5分くらいしてようやく出来たポテトに満足したオーナーに、

お礼を言いつつ、ひたすらにポテトを食べながら、

今日一日は大した仕事をしてないのに、とても疲れたと感じた。