ヒステリックな夜

夕べ、11時頃だったろうか、僕は食器を洗っていた。

すると突然、インターホンが連打される。

続いてドアのノック・ノック音!

「すみません!下の住人ですけど、部屋が汚水まみれになっています!!」

ドアを開けると40歳くらいの女性が、顔を真っ赤にして叫んでいた。

こんな若い人が住んでいたとは露知らず、動揺しつつも、

下の階へ行くと、確かに天井からの漏水で玄関先が水浸しになっていた。

「あの糞大家、居留守使ってるんですよ」

女性から「くそ」という言葉がとびだし、驚きつつも、

1階に行き大家宅をひたすらノックし続ける、女性。

しかし反応のないまま、女性は警察へと電話をした。

「災害なんです!大変なんです!大家も出てきません!」

5分後に現れた警察官とともに、大家もどこからか現れた。

ここから女性と大家のバトルが始まった。

1時間くらいだろうか、ヒステリックに怒る女性と、

のらりくらりかわす大家の話し合いは、平行線のまま。

結局のところ、漏水原因がわからないままでは水を使えないということになった。

トイレはどうしたらいいですが、と聞いたところ、

大家は近くのコンビニで用を足してください、と言ってきた。

僕は小さな勇気と少しの怒りから、そりゃないでしょ!と言ってみたら、

近くにある大家の倉庫にトイレがあるから、そこで泊ってください、

寝袋も用意するから、と言われてしまった。

「なんじゃそら!」と思いつつも、

怒りのエネルギーの全てを女性に取られてしまった気がして、従うしかなかった。

倉庫までの道すがら、大家の女性への愚痴を聞きつつも、

結局は「なんじゃそら…」と思うことしかできなかった。


寝袋ではまったく眠れない、そんな夜だった。